ひと記事

工房SlowField

工房Slowfield

埼玉県 / 作家 / ランディングネットと木工品

この記事で紹介する工房SlowFieldは、ちょくちょくを運営するスローフィールドの工房です。ほかの作り手と同じ形で紹介しますが、運営者自身の工房であることを先にお伝えしておきます。

小川のほとりで、小さな子どもが糸を垂らしている。糸の先にウキはなく、結んであるのは蔦草の葉が一枚。すぐそばの畑では、父親が働いている。

工房SlowFieldの工房主にとって、これが釣りの原風景だといいます。埼玉県の小さな工房で、渓流の魚をすくうランディングネットを、一本ずつ手で作っている人です。


黒柿ランディングネット

釣り人の「原風景」とは?

釣れたかどうかは、覚えていない。たぶん坊主だった、と工房主。

中学・高校ではバス釣りに夢中になり、免許をとってからは渓流へ。釣りから離れた時期もあったそうです。それでも、釣りの合間にふと浮かぶのは、草の葉を眺める幼い自分と、そばで働く父の姿。

釣り人にはきっと誰でも忘れる事の無い原風景があると思っています。


思い入れのある一本は、どんなネット?

いちばん思い入れのあるネットを尋ねると、挙がったのは自分の作品ではありませんでした。

10代のころに地元の釣具屋で買った、安い木製のネット。

そのネットは、もう手元にない。

釣り場を歩いている時に、いつの間にか無くしてた。


なぜ、ネットを作りはじめたのか?

始まりは、自分の釣りのために作った一本でした。作るうちに専用の治具や道具までこしらえるようになり、気づけば小さな工房に。初めてネットを作ってから、15年ほどになるといいます。

工房が掲げるのは「Made slowly, for the slow moments.」という言葉。川辺で魚を待つ時間、焚き火の前に座る時間、家でお茶をいれる時間。そんな静かなひとときのそばに置く道具を作りたい、という思いからだそうです。


ネット一本に、どれくらい手がかかる?

フレームとグリップを木から切り出し、削り、塗り、網を染めて取り付ける。そのすべてが手作業で、一本に数十時間かかります。

グリップに使う木は、黒柿や花梨瘤(かりんこぶ)のような稀少な材から、ウォルナット、メープルまで。オイルフィニッシュ(木に油をしみこませて仕上げる方法)にするか、鏡面に磨き上げるか。決め手は、木の性質とネットの個性です。

オイルフィニッシュや鏡面仕上など樹種の特性を生かし、ランディングネットの個性に合わせて、一つずつ丁寧に工房で仕上げます。

網に使うのは、工房で染めたクレモナ糸(ビニロン系の丈夫な合成繊維)。網だけ張り替えたい人には、染めたクレモナのスペアネットも用意しています。


小さな工房の制作物

一年に五本、というペースは?

2025年に仕上げた完成品のランディングネットは、五本ほど。白檀(びゃくだん)の曲がりフレームに、黒柿のストレート。ネットのほかにも、折りたたみのテーブルやネットの素材、替え網など、細々としたものを作ってきました。

ゆっくりなのは工房の名前のせいじゃない、と冗談めかしつつ、まだまだ少ない、とも。

直販でやってきた理由は、短い答えでした。

もともと趣味の延長で、本業は別にあったから。

ウェブサイトを開いたのは2024年。ほかの仕事との兼ね合いもあり、昔作ったネットの写真はほとんど残っていなかった。それでも、放っておくよりは、できる範囲で見せていこう。そう決めて始めたそうです。


自分で編む人には、何を分けている?

売っているのは完成品だけではありません。オフシーズンに自分でネットを作る釣り人に向けて、フレーム材やグリップ材、クレモナ糸も分けています。

網を編むための網針(あばり。糸を巻いて網目を編む、平たい道具)も、そのひとつ。真竹や孟宗竹を切り、割って、削って、磨く。

時には、普段と異なる作業をするのは刺激的で楽しいですね。

2025年の春、思いがけず網針をまとめて頼まれ、数年ぶりに長い網針を作ったときの言葉です。頼んだ人の使い方に合わせて、工房の標準とは少し違う仕様を打ち合わせたとのこと。

竹の表面には、刃物の摩擦でついた焼けや、くすみが残ることがある。手で削った竹だから出るもので、あえて取り除かない。それがこの工房のやり方です。


釣りのほかには、何を作っている?

釣りの道具と並んで、暮らしやアウトドアの木の道具も作っています。

  • 木の栞:カーリーメープル、ブビンガ、黒柿、ウエンジ、神代楡から選べる無垢の栞。紐はヌメ革。
  • カッティングボード:ウォールナット、メープル、アメリカンチェリー、栗。キャンプにも、家の食卓にも。
  • バタースプレッダー:黒柿、ウォルナット、栗、アメリカンチェリー、ブビンガ、紫檀。
  • ソロテーブル:OSBボード(木の薄片を固めた板)の天板に、ウエンジの縁。脚を差し込んで組み、たたんで持ち運べる。

どれも注文を受けてから作るため、同じ木でも、木目や色が同じになることはありません。

バタースプレッダー

買う前に知っておきたいこと

  • ほとんどの品は受注生産。注文後に作り始めます。
  • ソロテーブルは注文から納品まで約3週間。網針は最大2〜3週ほど。【要確認:網針の納期表記】
  • 樹種や仕様の相談は、工房のお問い合わせフォームから。
  • 価格は工房のショップで確認してください。

この記事は、工房SlowFieldのウェブサイトに載っている内容と、工房主に伺った話をもとに構成しています。

購入・問い合わせ

工房Slowfield

ちょくちょくは販売や仲介をしていません。購入・問い合わせは作り手に直接どうぞ。